転職したおかげで学生以来6年ぶりの1ヶ月休みが到来したから、2週間ほど西日本へサウナ旅に出ていた。
旅の道中、長年気になっていた古代サウナ「塚原のから風呂」に立ち寄ったんだけど、他のサウナとは明らかに一線を画す施設だったから紹介したい。
熱いサウナが好きな人や普通のサウナに飽きてきたって人は、ぜひこの記事を読んで訪れてみてほしい。
塚原のから風呂は奈良時代からある古代サウナ
香川県さぬき市にある「から風呂」は、約1,300年前の奈良時代に庶民の病気を治す目的で造られた蒸し風呂。現代でいうサウナ。
風呂(サウナ室)はすべて石と粘土で造られた石室になっていて、中の構造は幅1.2m、奥行2.7m、天井は1.2〜1.5mほどとかなり低い。
実際入ってみると、閉塞感がすごい。軽い閉所恐怖症の俺は最初パニックになりそうだった。
閉所恐怖症の自覚がある人は注意が必要。
焚いている様子は火事そのもの
から風呂はなにからなにまで他のサウナとはまったく異なるスタイルを確立しているんだけど、中でもその焚き方がめちゃくちゃ豪快。
から風呂は普通のサウナみたいにストーブがあるわけじゃない。だったらどうやって暖めるのか?
方法は意外と単純で、石室(サウナ室)の中で直接薪を組んで火をつけるんだ。
意味がわからないと思うかもしれないが、俺が行った時、まさに焚いている最中だったからその様子を撮影することができた。
見た目火事だろコレ。
ただ、この状態で人が入るわけではないから安心してほしい。
1時間ぐらいこのまま燃やし続けた後、火が着いたまま炭を床に敷く。その上に濡れた布を重ね、さらに30分蒸らしたら完成するとのこと。
原始的だけど、電気のなかった時代にこんな方法でサウナを作ってしまうんだから、昔の人はすごい。
ちなみに、から風呂を焚いている様子は16時頃に行くと見ることができた。
から風呂はもう長くないかも
今回の記事を書くにあたり、から風呂の運営状況について調べたんだけど、思った以上に厳しいっぽい。
昭和初期までから風呂はかなり人気だったようで、たくさんの人が入りに来ていたんだけど、平成になってからはスーパー銭湯などの誕生で、徐々に利用者が減少。
経営難で一時は休業するほどだったんだけど、地元有志の努力によってなんとか運営されているっていうのが現状。
今後どうなるかわからないけど、高齢化が進む地方で地元有志がいなくなれば存続が困難なのは明らか。
から風呂に入れる時代に生きている俺たちは、めちゃくちゃラッキーなんだ。
あつい方とぬるい方
から風呂に入る扉は2つある。その名も「あつい方」と「ぬるい方」。
言うまでもなく、それぞれ温度が違う。
先に焚いておいて一定の時間を置いてから入るのが「ぬるい方」で、後に焚いて間髪入れずアツアツの状態で入るのが「あつい方」。
どちらも中の作りはまったく同じ。
全然ぬるくないぬるい方
ここで勘違いしちゃいけないのが「ぬるい方」だからといって、まったくぬるくないということ。
ぬるい方・あつい方と聞くと、ぬるい方は普通のサウナ施設でいうミストサウナみたいな低温サウナを想像するかもしれない。
ところが、「ミストサウナでウォーミングアップしとくか」みたいなノリでぬるい方に入ってしまうと、間違いなく後悔する。
なに言ってんの?って思うだろうけど、実はこのから風呂、「ぬるい方」と銘打っておきながら、その温度は余裕で100度を超える。時には120度になることもあるらしい。
はぁ?ぬるいから「ぬるい方」なんじゃないの!?って思った人、その感覚は正しい。
120度っていったら、その辺の銭湯サウナどころかサウナ専門施設でもなかなか体験できない温度。そもそも100度を超えるサウナ自体、全国的にみてもかなり数が少ないんだ。
なのに、ぬるい方で120度って頭おかしい。
あつい方は170度
「ぬるい方で120度なら、あつい方はどうなるんだよ」って思うのが通常の思考回路。
温度計が設置されてないから調べたところによると、どうやらあつい方は170度になるらしい。
うん、人が生存できる温度ではない。
絶対盛ってるだろって思うかもしれないけど、俺は実際に入ったからわかる。170度って温度は嘘じゃない。こればっかりはマジで体感してほしい。
おそらく日本一熱いといっていいはず。
着衣に頭巾と毛布と座布団が必須
から風呂は着衣で入るのが基本。さらに服の上から以下のアイテムを身にまとう必要がある。
- 頭巾
- 毛布
- 座布団
- 草履(ぞうり)
から風呂を知らない人は、この時点でもうワケがわからないと思う。
頭巾なんて持ってねーよって人が大半だと思うけど、100円でレンタルできるから安心してほしい。
1番使い道のわからない毛布は、下の画像みたいに上から羽織るために使う。
どんだけ熱いんだよって感じだけど、入ってみるとわかる。この毛布なしじゃいられないぐらい熱いんだ。
座布団はサウナマットと同じで、座るところに敷いて使う。草履も素足だと熱いから履いといた方がいいし、靴下があるとなおいいだろう。
頭巾以外の毛布・座布団・草履は無料で使用できる。
普通のサウナじゃ考えられないスタイルだけど、から風呂に入る前段階として、これらの装備が必ず必要になるんだ。
「熱波を受けたこともあるし、熱いサウナには慣れてるぜ」って人でも、なんの装備もなしで入るのだけはマジでやめといた方がいい。
絶対後悔するし、最悪命に関わるかもしれない。
頭巾をサウナハットで代用するのはおすすめしない
100円とはいえ、頭巾のレンタルは有料だし、見た目がダサいから「サウナハットで代用できるんじゃないか」って思うかもしれないけど、おすすめしない。
というのも、頭巾とサウナハットでは使われている生地が違うから、断熱性に大きな差があるんだ。
サウナハットはフェルトやタオル素材が多いけど、頭巾はキルティング素材を使っている。
キルティング素材というのは、2枚の布の間にワタを入れて縫い付けた素材のことで、テントサウナで有名なモルジュにも使われている。
言わずもがな、サウナハットと比べると、頭巾の断熱性は圧倒的に高い。その上、頭巾は首まですっぽり隠れるぐらい布面積が大きいから、熱から守れる範囲も大きい。
小学生以来の防災頭巾
ってわけで悪いこと言わないから素直に頭巾を借りといた方がいい。
俺も一人だったから、少し恥ずかしかったけど頭巾を借りてよかったと心の底から思えた。それに多くの人が保育園の時から頭巾なんてかぶってないだろうから、逆に楽しめる。
ちょっとぐらい見た目がダサいのは目をつぶろう。 続きを見る
【サウナハットがうざいと感じる理由】意識高い系のマストアイテム
ぬるい方に入ってみた感想
ここからは実際にから風呂へ入ってみた感想を解説していく。
まず、俺がから風呂を訪れたのは木曜日の16時過ぎだった。この時間だと、あつい方はちょうど焚いている最中らしく、中から激しく炎があがっていた。
もちろんこの状態であつい方に入るわけにはいかないのから、必然的にぬるい方からスタート。
暗すぎて何も見えない
畳の休憩スペースに置いてある座布団を借りて、ぬるい方へいざ入室。
防空壕のような見た目どおり、扉を閉めると中はかなり暗い。
一応、外から投光機でライトを当ててくれてはいるんだけど、
しばらくして目が慣れるまでは、奥の方に人がいても全然わからない。
俺は入って3分ぐらいたった頃、ふと視線を奥に向けると初めて先客がいるのに気づいた。
防災頭巾をかぶったおっさんが暗闇から急に現れたもんだから、声を出して飛び跳ねてしまった。
おっさんも相当おどろいてた。びっくりさせてゴメンよ、おっさん。
ぬるい方とは名ばかりの超高温
先にも書いたけど、から風呂のぬるい方は普通に熱い。
服を着ているから、裸で入るより熱を感じにくいはずなんだけど、それでも街の銭湯サウナに比べたら段違いの熱さ。
入って1分もすれば大量に汗が吹き出る。もちろん1セット目で服はビショビショ。
前後左右から熱が襲ってくる
おそらく、熱さの要因は石室っていう構造にある。壁と天井が石でできているので、前後左右から大量の輻射熱が身体を襲うんだ。しかも熱源は床にあるっていう役満状態。
普通のサウナはサウナストーンの周りを人が囲うけど、から風呂は人がサウナストーンに囲まれている、そんな状態。そりゃ熱いに決まってる。
温度計があるわけじゃないから実際の温度はわからないけど、体感は100〜110度くらい。
常連のジイさんは上裸で入ってたけど、初めての人は真似しない方がいい。
あつい方に入ってみた感想
つづいて、あつい方に入ってみた感想を解説する。
俺が行った日はあつい方に入れるのが18時からだったんだけど、ちょうどその時間には他にお客さんがいなかったから、一番風呂をいただくことになった。
から風呂を焚いていたおじさんが言うには、焚き上がった直後が1番熱いらしく、入り方にはかなり注意が必要とのこと。
なので、あつい方の入り方や注意事項をかなり丁寧に説明してくれた。要約すると以下のとおり。
- 毛布は2枚羽織れ
- 入ったら入口の手前に座れ
- 奥は熱すぎるから行かなくていい
- 毛布にくるまって絶対に手足を外に出すな
- やばいと思ったらすぐ出ろ
おいおい・・・一体この扉の先になにがあるんだ・・・
説明が怖すぎる。
とはいえ、数々のサウナに入って高温空間に慣れているつもりの俺は、「いってもサウナみたいなもんだから、まぁ耐えられるだろ」ぐらいに考えていた。
ところがこの後、これまで持ち合わせていたサウナの常識がひっくり返ることになる。
あつい方は相当の覚悟が必要
おじさんの脅しのような説明が終わった後、俺は一応毛布を2枚羽織って意気揚々とあつい方の扉に手をかけた。
10cmぐらい扉を開けたところで、手が止まる・・・
俺は一旦中に入らず、そっと扉を閉めた。
中でキャンプファイヤーでもしてるのか?
そう感じるぐらい、顔にとんでもない熱風が飛んできたんだ。例えるなら、火山地帯の蒸気みたいな、絶対火傷するぞって俺の身体が脳に危険信号を出す、そんな熱だった。
振り返るとおじさんがニヤニヤしている。
さっきの説明はそういうことか・・・
察しのいい俺は満を持して再び扉をあけた。多分一気に入らないと、身体がこの熱を拒否すると思ったから、身を低くして小さな扉の先へ飛び込んだ。
この時の気分はバンジージャンプを跳ぶ時と完全に一致していた。
熱すぎる空間の中、なんとか歩みを進めて、おじさんの言いつけどおり入口手前に座布団を敷いて座り込む。
座った瞬間から
アツイ!イダイ!アヅイィィ!
って感じ。
この時はとにかく毛布で皮膚を隠すのに必死だった。
少しでも肌が露出すると、熱した金属に触れた時のように痛みを感じる。息をしても、吸う空気が熱すぎて、唇が痛い。
火災現場に取り残されたらこんな感じなのかな、とふと想像する。
顔も毛布で隠れているから、視界ゼロ。
あまりの熱さと閉塞感、呼吸もおぼつかないって状況に、昔読んだ「嘘喰い」という漫画に出てきた「ファラリスの雄牛」という拷問器具を思い出す。
もう、拷問かってぐらい熱い。
出ようと思っても、毛布がズレて肌が出ると激痛が走るしから、怖くて動けない。入ってきた扉がすぐ近くにあるはずなのに、数メートル先にあるように感じる。
肌を出すと死ぬ、動くと死ぬ、息をしても死ぬ。そんな感じ。
これマジでやばいって何度も思ったけど、ここで死んだらもう全国に数多ある極上のサウナへ行けない。決死の覚悟で、出口である扉まで身体を動かし手をかけた。
生死をさまよいながら、あつい方を出ることができた直後の感想は
生きてる!
それだけ。気持ちいいとかはなかった笑
どれぐらい中にいただろうか、15分ぐらい入っていたように感じたけど実際には1〜2分だったと思う。
出た後は目の前にある休憩スペースに倒れこんだ。
吹き抜ける風が心地よい。
生まれて初めてサウナが怖いと思った
2セット目以降は、あつい方に入るのがとにかく怖かった。
目の前のサウナに対してこんな気持ちになるのは初めての経験。から風呂は厳密にはサウナじゃないんだけど。
から風呂に今までのサウナの経験値はほとんど役に立たない。
少なくとも、テントサウナの激熱ロウリュを数え切れないほど味わってきた俺が、今回は圧倒的敗北だと感じた。
高温サウナでの耐久力に自信のあるサウナーも、から風呂のあつい方に入る時は覚悟しておいた方がいい。
一番風呂を狙え
できるだけリアルさ重視で詳細に解説してきたけど、どうしても文字だけじゃ伝わらない部分が多い。
から風呂の地獄のような熱さと、非日常は実際に現地へ足を運ばないと体験できない。
できるなら18時前後、その日のあつい方一番風呂を狙ってみてほしい。本当に死ぬような思いができるはずだ。きっと後悔しない。
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持っていくと便利な物
最後に、今回から風呂に入ってみて、あったら便利だなと感じた物を解説する。
今後から風呂に入ろうと思っている人は以下のアイテムを持参すれば快適に過ごせる。
- フェイスタオル
- 飲み物
- 濡れてもいい服
- お風呂セット
フェイスタオルは汗を拭く用と、最後シャワーを浴びる時用に2枚持っていくのがおすすめ。から風呂にはちゃんと男女別にシャワールームが完備されている。
飲み物は滞在時間や自分のキャパに合わせて、多めに持っていくのがおすすめ。から風呂では飲み物の販売は行っていないから、持参しないと脱水で悲惨なことになる。俺は3時間で水1Lを消費した。
シャワールームに一応シャンプー類はあるんだけど、スパみたいにちゃんとしたアメニティがあるわけじゃない。こだわりがある人はお風呂セットを持参しよう。 続きを見る
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コンプレッションウェアがおすすめ
コンプレッションウェアっていうのは、スポーツ用品店のポスターなんかで外国人が着ているピチっとしたアンダーウェア。
運動時に着ることを想定しているから、汗をかいても不快感が少ないんだ。
俺は別にマッチョじゃないけど、普段着としても愛用している。
今回、上下コンプレッションウェアにTシャツ・ハーフパンツでから風呂に入っていた。
ただ、生地自体は快適性を重視してかなり薄いから、断熱性は期待できない。
汗で不快になっても断熱性を重視したい人はユニクロのスエットなんかがいいと思う。
おすすめのコンプレッションウェアについては以下の記事で詳しく解説しているのでよかったら参考にしてほしい。 続きを見る
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塚原のから風呂はサウナ好きの終着点
北は北海道、南は沖縄までたくさんのサウナ施設へ行ってきた俺だけど、から風呂だけはマジで唯一無二だと感じた。
なにしろサウナに入って「死ぬかも」と感じるような体験ができるのは、今のところ他にないと断言できる。
1300年前から続く古代サウナ「から風呂」は全サウナーの終着点。
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普段サウナに入らない人にもおすすめ
こういう書き方をすると、から風呂がただ怖いだけでまったく楽しくない施設のように感じるかもしれないけど、勘違いしないでほしい。
俺はサウナ好きだけでなく、普段サウナに入らない人にも全力でから風呂に行くのをおすすめしたい。
というのも、近所のサウナでは絶対に経験できない非日常空間は、たとえサウナ好きじゃなくても楽しめると思うし、友達や夫婦で行っても絶対盛り上がる。
それに古代サウナ体験なんて、話のネタとしては極上の素材だ。から風呂へ行った後は、職場や学校で存分に自慢してやろう。
俺は今回のサウナ旅をする中で、行っておいてよかったと本当に思っている。
西日本サウナ旅の概要は以下の記事中盤でまとめているから、よかったら読んでみてほしい。 続きを見る
【ムサレタイマガジン7月号】一人旅はおっさんになるための準備
塚原のから風呂 概要
施設名 | 塚原のから風呂 |
住所 | 〒769-2304 香川県さぬき市昭和1050-4 |
電話番号 | 0879-52-1202 |
駐車場 | 有り |
公式サイト | https://karaburo0.webnode.jp/ |
営業時間 | 木曜日〜日曜日 12:00〜21:00 |
定休日 | 月曜日〜水曜日 |
料金 | 500円 頭巾レンタルは100円 |
アクセス | ことでん長尾線 長尾駅からタクシーで5分 |